山の端さっど

小説、仮想世界日記、雑談(端の陽の風)

一人で助かってもいいしさ、

今日はずるやすみをしよう

稲葉曇『きみに回帰線』Vo. 歌愛ユキ - YouTube


 奇跡がビル群や砂利やアスファルトやページなんかの間に呑気に転がっている。

 パズルの小さな小さなピース。
 世紀の大決戦場跡に散らばるBB弾。
 砂場の王城を構成していた砂粒。
 知らない料理の香り。
 途方もない天敵から逃げのびて息つく虫。

 考えながら過ごすと人生はどこまでも生きづらくなる。建設的なものを得られるように歩いていかないと、何も建てられないから。誰かの奇跡は建材にならない。アミノ酸でもカルシウムでもなく、食物繊維ですらない。

 実に不服である。誰が好き好んで隣人に無関心であろうとするものか。
 そして何を好き好んだら、自分を構成するためには一切使えないものに向き合って心を砕けるだろう。


稲葉曇『きみに回帰線』Vo. 歌愛ユキ - YouTubewww.youtube.com
ーー稲葉曇さん「きみに回帰線」


 小さな奇跡は背後に起きる。生き急ぎ言葉を詰める歌声の間に寝転んでいる。あくびをひとつする。

 何を手にすれば良いのか分からないまま生きる。役に立たないものばかり目につく。耳につく。それでも一歩をのろのろやれる。やった。奇跡みたいな足跡を残せることもある。歩けないこともある。美しい砂の城を作れることもある。うまく出来ずとも知らない。のたくった跡を出来損ないとは言われたくない。個性だとも言われたくない。好きで頑張らなければ生きていけない生き物に生まれてきたわけじゃない。レンガをあげるとか言い出しそうな顔だけして。知らせたいなら知るべきだ。半端に砂の山に指跡をつけるだけで動くならもう動いている。波も風も砂を崩すから。ここに居続けるのには意味があると分かってほしい。分からないならあっちに行っていてほしい。憎い。そちらの水が甘くても、ここにも水がある。そのうち枯れる。写真もゲームも本も細胞もどうせ役には立たない。わたしにもあなたにも。自身も勇気ももう言い訳になってしまった。では他に何が要るだろう。何度も言ってくれるけれどまだ届かない。何でも聞こえる耳だったはずなのに。色んなものが見えることだけが救いだったのに。生き物に生まれたからって何かを残すのが当然のことではない。その指の跡を邪険にしたいわけじゃない。おやすみなさい。


 カーテンの向こうはどれだけの奇跡だっただろう。必然に見えただろうか。特別な朝日なんてなく、いつの間にか当たり前のように転がっていただろうか。

想像の通りにいかなかった分だけ
遠回りした正解で安心をきみに返している

 勝手に1人で好きに積み建てられるようになった気でいても、それだけで、すでに、もう、奇跡だったのに。