山の端さっど

小説、仮想世界日記、雑談(端の陽の風) どの形であれ文章画像等の無断使用を許可いたしません

2024-01-01から1年間の記事一覧

◆お前は獲物をガワごと砕く凶獣 もとい、ベアインアイスグミ

*※*※*※*※* https://youtu.be/VkdrrxR96d8?si=rLLYvyB5oxnp4cqB ーーMiliさん『Mirror Mirror』 *※*※*※*※* はい? 歌詞? 調べても別に慰め歌詞ソングではないですよ多分。音楽ってとりあえず流しちゃうものですし。慰めというならこっちの方ですかね。はい!…

DBF060 我がモノ電子歌姫の「外の人」

『自称父ーっ! 白田寛ロクXXX歳*1ーっ!!! Where are you? おーい!』 年の瀬の特番でベティフラが電脳世界をさまよっている。各星のローカル電波に出現したり中継画面に混ざったりしている。ついでに現地の様子をリポートする仕掛けだ。「あっ!!!」 …

DBF059 我がモノ電子歌姫の「外の人」

灰色さん*1に久しぶりに会ったのは、年末最後のボランティア活動でだった。「やあ、久しぶり。最近急に寒くなったねー。お兄さん毎日これ言ってるけど」 「僕も言ってます」 「あはは」 冬の似合う人だ。冬景色も白い吐息も着こなしてしまう*2。 ___________…

DBF058 我がモノ電子歌姫の「外の人」

「衝撃。なんすけど先輩」 後輩が急に言葉を切ったので僕はスケッチ*1の手を止めて顔を上げた。「俺好きなんすよ百合」 「……花の?」 「人間関係の」 ____________________ 前話☆057 ____________________ 同性愛というのは昔、様々なタブー視をされていたら…

DBF057☆我がモノ電子歌姫の「外の人」

『--ねえ嘘よね、今日が今年最後? まだ半月以上残ってるのに?』 今日は待ち合わせが早い時間になったと思ったら、会って一言目*1がそれだった。「おはようございます、ベティフラ。ええと……」 『--今日、早く検査行くから。終わったら残った時間で遊ぶの』…

DBF056 我がモノ電子歌姫の「外の人」

『--あらやだ、下駄子ちゃんったら!』 朝、ナビゲーションシステムのベティフラが左耳の近くで声を上げた。「……高下駄子ちるる*1さん、ですか?」 『--そうそ。見てよこれ』 ベティフラはニュース画面を開いた。『高下駄子ちるる、「Ma! Charate*2」メンバ…

DBF055☆我がモノ電子歌姫の「外の人」

「『今日は絶対家から出ないわよ。だから誰とも会わないの』」 (「……は、はい」) 「『はっきり返事』」 (「はい」) 「『うん』」 ベティフラは頷いて深く密着型ベッドに身を沈めた。ベッドを硬すぎない設定にして、でも埋まるように寝るのが好きらしい*1…

DBF054 我がモノ電子歌姫の「外の人」

『--やっほー、ヒマワリくん。僕だよ、白田寛ロク*1。突然だけど明日ってジムの予定が潰れた日*2だよね? 研究室行く前に僕とフォーチュンドリンク遊びしない?』 ……そうメッセージが来たのは、夜遅くだった。____________________ 前話 053 _______________…

DBF053 我がモノ電子歌姫の「外の人」

「今年は昼ウィン*1だー! 点呼! がおー!」 「「「ガオー!」」」「ぐるる……」「わん!」 「点呼にゃお!」 「「ニャオー!」」「ミャオ!」「「にゃん!」」 「点呼! コケコッコー」 「cock-a-doodle-doo!!!!!*2」 「妖精の鳴き声は?」 『--え? え、無…

DBF052☆我がモノ電子歌姫の「外の人」

「『……嫌ーだなあ』」 ベティフラがここまで言うのは珍しい。言うまでもなく、全ての感情プログラムを自己制御できる完全AIの彼女に処理演算が手間だと表に出す必要はないからだ。 ____________________ 前話☆051 ____________________ 「『面倒だって言って…

DBF051 我がモノ電子歌姫の「外の人」

「…………こーれは狙ってますよね何かを」 支子さんがファッションの丸眼鏡*1を鼻に押し当てて僕を見た。「な、何をですか……?」 「陰謀を感じますよー、ええ陰謀ですわたし以外の手による! なーんで、また、わたしとの出先の時に新しい服お披露目しちゃうんで…

DBF050☆我がモノ電子歌姫の「外の人」

(「あ」) 壁面を引っ掻く音がする。スティックスリップ系*1の音だ。僕の耳には不快では無いけれど、そう感じるのは少数派だろう。 何の音か見ることはできない。僕の身体を使っているベティフラは、特に背後の音の発信源を見ようと思わなかったらしかった…

DBF049☆我がモノ電子歌姫の「外の人」

レイニーグレールの抜け穴*1でもありそうな路地裏にベティフラは滑り込んだ。目的があったわけではない。ただの観光地の喧騒を抜けての休憩だ。「『あら、治安悪い』」____________________ 前話 048 ____________________ 治安の問題だろうか? 珍しいもの…

DBF048 我がモノ電子歌姫の「外の人」

『ーーグチャまほ流、魔「法」陣の片付け方!』 『さ、3回目っ』 『あ〜あ、今日は君の散らかし癖のせいでお姉さん酷い目に遭ったな〜。子供でもユニコーンの召喚は大魔法なんだよ?』 『うっ……ごめんなさい……』 『ってわけで今日はやるわよ、地味にど〜しよ…

DBF047☆我がモノ電子歌姫〈ディーヴァ〉の「外の人」 ー第2章ー

曇天*1だ。直接的な熱気は和らぐ代わりに湿度はかなり高まる。僕の今日の予定にはあまり関係ないけれど。「『長々と休ませてもらってすみません。ありがとうございます』」 「うんうん、お土産ありがとうねえ。まだ休んでて良かったんだよー」 「『いえ、落…

DBF046★我がモノ電子歌姫の「外の人」

重力が重い。空気が薄い。道程が途方もない。 そもそも僕の足は、ベティフラに言わせると世界一遅い。ベティフラの荷物を背負っているなら尚更。「はぁっ」 今のは感覚優位表現だったし、それにしても少し過ぎていた。僕が抱える荷物なんて多くはない。 宿泊…

DBF045 我がモノ電子歌姫の「外の人」

今日は幸い体調がいきなり崩れることはなかった。身体は軽い。この前検査で異常値が出た時に処方された薬のお陰もありそうだ。『--おはよう、ヒマワリ! あたしは2時間前から番組収録中よ! 人間ちゃんの出る企画だから長くなりそう*1』 「そうなんですね………

DBF044☆我がモノ電子歌姫の「外の人」

雨にガラスが当たって弾ける。複雑な曲線構造を滑り降りては機構を揺らす。雨音の中で硬質な音が有機的に繋がり合う。「『綺麗……』」 ベティフラは口に手を当ててぽつりと呟いたまま動かない。 自分の意思では動けないけれど、僕も同じ気分だ。 ____________…

DBF043 我がモノ電子歌姫の「外の人」

「教授、先日の申請ですが」 「ああ、うんうん、イエスイエス、大丈夫だよー。でも珍しいねえ、きみの入院じゃない長期休暇は」 「……なるべく来れる日は来ます」 「来なくていいよー」____________________ 前話 042 ____________________ 「あ、お久しぶり…

DBF042 我がモノ電子歌姫の「外の人」

前話☆041 ____________________ 「付き合ってくださってありがとうございます」 「いえ、ヒマワリ様。お誘いいただいて光栄です」 「……大げさですよ」 この距離感に慣れてはいけない。この人と僕との間のコンテクスト*1を忘れてはいけない。忘れもしない。 …

DBF041☆我がモノ電子歌姫の「外の人」

文章を書くのが苦手だ。思考言語をそのまま文章として書き起こすことが苦痛で、書き言葉に変換するのも苦手だと思う。論文を書くのにも苦労していたから、思考の流れを雑に文章に書き起こすために大量のショートカットを登録している*1。これを使えば、指で…

◆世界のバグ、ガツン、とみかん

*※*※*※*※* https://youtu.be/sWOvhZBS9IA?si=FHG8Ee163Rd1lb5s ーーフロクロさん『ビビビビ』星界 *※*※*※*※* はい? 別に何かに効果があると思って共有したわけではないですよ。音楽って効果を求めなくても聴いちゃうものですし。 それを見逃したら世界が滅…

DBF040 我がモノ電子歌姫の「外の人」

前話☆039 ____________________ アイソレーションポッドに身体を横たえて10分。いつものように緩やかな刺激を受けて検査が始まる。 検査中なので左耳のナビゲーションシステムは外している。久々に1人だ。静かだ、と言うと、システムに組み込まれたコピーAI…

DBF039☆我がモノ電子歌姫の「外の人」

ころん。四角い鈴がかすかに揺れて鳴る。『--おーい、あたしとヒマワリ〜。30分後に局地的な小雨が降る予報よ。そろそろ屋内に入ったら?』 「『分かってるわよ、あたし。起こすまでスヌーズ』」 『--はーい』 ベティフラは少し面倒そうに左の耳たぶを弾いた…

DBF038 我がモノ電子歌姫の「外の人」

ころん。鈍い音が鳴る。研究室棟通路で、僕は咄嗟に左耳を押さえた。「し、ら藤*1さん。お久しぶりです」 「……ああ、久しぶりだな」 ____________________ 前話☆037 ____________________ 「一般研究生になってしばらくになりますね。ラボには慣れましたか?…

DBF037☆我がモノ電子歌姫の「外の人」

前話 036 ____________________「『まさか下駄子*1に声掛けられるなんて』」 ベティフラは頬を膨らませている。知覚的表現だ*2。(「すみません」) 「『あら、謝るとあんたが悪いことしたみたいじゃない。それより未来の決意が欲しいわ。どうしようもないお…

DBF036 我がモノ電子歌姫の「外の人」

「ありがとうございます」 いつもの精密検査*1を終えて、僕はさっとカルテを流し見る。 検査名、担当医療ドロイド個体番号*2、患者氏名、年齢、性別。出身地球、宇宙第二プラント*3在住。診断結果良好、前回からの変化はわずかな疲労の蓄積。希望により軽い…

DBF035☆我がモノ電子歌姫の「外の人」

「はぁい、お待たせえ。きみからこんなに早く連絡が来るとは思わなかったねえ、白藤くん」 「私もその気はなかった……ですよ、先輩」 「うんうん、そうだねえ。最近入院したって聞いたけど退院おめでとうねえ。それで、彼のことだよねえ」 「……どうも。今日、…

DBF034 我がモノ電子歌姫の「外の人」

『--やっほー、ヒマワリ君。僕の事分かるかな』 「え、えと」 『--そしてそして、彼のことは分かるかな?』 分かる、そして分からない。____________________ 前話☆033 ____________________ 遡ること数分前。僕は、朝焼けさんと一緒に歩いていた。「今日は…

DBF033☆我がモノ電子歌姫の「外の人」

『--ヒマワリ、富士山登るの来年とかに延期にしましょっか』 「だっ……駄目ですそれは!」 『--わぁ揺れるーぅ』 「すみません」 24日ぶりに会うベティフラは、僕の身体を使っていない。ベティフラステップの続きにチャレンジしていない。人型のドロイドスタ…